2005年04月26日
仕事も名前も年齢も、なんにも持っていない自分に会いにゆく / 作家がこよなく愛する旅を綴った最新作!
株式会社アクセス・パブリッシングは、2005年 第132回 直木賞受賞作家であり、20-30代の女性を中心に圧倒的な人気を集めている角田光代さんの旅のエッセイ集「いつも旅のなか」を刊行し、2005年4月11日より、全国書店ならびに当社のオンラインショップ(www.tokyo-calendar.tv/publication)にて発売いたしました。
これは、当社の月刊雑誌「生本-NAMABON-」(※)にて2年間にわたり連載されたエッセイをまとめ、書き下ろしを加えたものです。
20代はじめに旅に魅せられ、訪れた国は20数ヶ国。「旅することは個人的な”純粋趣味”だから、旅について書くのはぜったいにやめようとつねづね思っていた」という著者が、初めて綴った24のエッセイには、モロッコ、ロシア、ギリシャ、スリランカ、イタリア、ベトナム…旅で見たもの、出会ったもの、触れたものが生き生きと描かれています。著者本人が撮影した写真も掲載されており、角田ファンはもちろん、旅好きの方にも見逃せない1冊です。
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■書籍データ
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書 名 「いつも旅のなか」
著 者 角田 光代(かくた みつよ)
発 行 アクセス・パブリッシング
仕 様 四六上製版
ISBNコード ISBN4-901976-22-2
定 価 本体1,500円+税
発 売 2005年4月11日
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■著者プロフィール
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1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。90年『幸福な遊戯』で海燕新人文学賞、96年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、98年『ぼくはきみのおにいさん』で坪田譲治文学賞、2005年『対岸の彼女』で第132回直木賞を受賞。
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■角田光代「いつも旅のなか」抜粋
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◆「あとがき」 いつも旅のなか
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旅することは、数少ない私の純粋趣味である。純粋、というのはつまり、なんの役にもたたなくとも、あるいは損をしたって、好きでいることをどうにもやめられない、というような意味だ。だから、旅について何か書くのはぜったいにやめようとつねづね思っていた。純粋趣味はその枠を超えてはいけないのだから。けれど旅が終わって帰ってくると、どうしても書き記したくなる。カメラにはおさめきれなかったものなどを、書きつけておきたくなる。そうしてたいがいが、カメラにはおさまらないことばかりなのだ。
………(中略)
旅は終わってしまうとするすると手を離れていってしまう。そのとき目にしたものは、永遠に消えてしまう。旅で見たもの、出会ったもの、触れたものに、私はもう二度と会うことができない、書くことで、かろうじてもう一度、架空の旅をするしかできない。いや、書くことで、架空にしろ、二度とできないたびをもう一度することができるのだ。
………(中略)
読んでくださる方が、ほんのいっときでも旅をしてくれたらとても幸福です。その旅のなかで、何ももたない旅行者同士としてすれ違えたら、本当にうれしい。
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◆「サイミン」ハワイ島 ヒロ
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その町に流れる時間軸に、すっと入りこめるときがある。どんな町でもだいたい、滞在三日か四日目でそういう時がやってくる。そこでくりかえしおこなわれている日常が、肌で理解でき、自分がそこのくみこまれているのだと理解する瞬間。ふっと溶けこむ。ずうっと昔からここで過ごしているような錯覚を淡く感じていた。せつないような気持ち。
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◆「ほとほといやになるけれど」 イタリア
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どうしても見たいと思うものを見ない、というのは、私にとって、何か、生きていくことの細部を一個ずつあきらめていくことに通じている。
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◆「そういえばミャンマー」 ミャンマー
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土産物屋や食堂を抜け、ずっと奥に進んでいくと、急にゴールデンロックはあらわれる。写真で何度も見たことはあるが、それはやっぱり圧倒的な後継である。近づけば近づくほど、何か不安な気持ちになる。だってそれば、本当に崖の一点に引っかかっているのだ。(中略)
本当に不思議な光景だ。私はずいぶん長いあいだ、青い空を背景に、不自然にそこにある金色の石を眺めていた。冗談みたいなこの石が、なんだか世界を支えているようにも見えるし、もっとも醜いことをその下に封じこめた重しみたいにも見える。
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◆「ときに示唆する旅」 ネパール
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親切なだれかがどこかへ連れていってくれるのを待っていたってどうしようもない、先に何があるのかわからなくても、それがどんなにみみっちいことでも、自分ひとりで動きださなきゃいけないときは少なからずある。それでも心配することはない、途方にくれたとき周囲を見渡せば、自分に向かって差し出されたてのひらが必ずある。
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◆「はつ恋」 タイ
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変化と、けれど何があっても変らぬ確固とした核。これがきっとタイの姿なのである。最初に惚れた男は、惚れてしかるべき魅力のある男だったと十年と少し後に実感し、おのれの審美眼を褒めたくなる。もちろんこれまた、実際の人間を比喩しているわけではないんだけれどね。
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◆「いのちの光」 キューバ
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見たいものがこれといってあるわけではない。ただ、あの色の中に身を置きたい。光と音のなかで、剥き出しの生みたいにはじけ合う色のなかに、たっぷりと身を浸したい。冷たいモヒートを飲みながら。
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■「 生本 -NAMABON -」について
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生本(なまぼん)は、「肩のこらない文学的雑誌」です。若い世代を中心に「活字離れ」が進行していると言われる時代に、改めて「活字」にこだわった新しい「活字型読み物雑誌」を目指しており、バリエーション豊かで魅力的な作家による作品(読みきり/連続小説)は、高校生からシニア世代まで、幅広い読者層に支持されています。
作家陣は、原田宗典、安西水丸、群ようこ、山咲千里、成田はじめ、筒井ともみ、横内謙介、岩立良作、辻よしなり、荒井良二、中村芝雀、伊藤洋介、なべやかん(順不同/敬称略)。
2002年9月創刊。毎月21日発売/定価350円(税込み)
株式会社アクセス・パブリッシング |2005年04月26日 15:34
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